は役に立たない。それよりオートバイ乗りが使うような幅の広い腹帯を用いる方が余り長時間でなければ有効かもしれない。このような衝撃対応には目から入る情報が大きく影響しているので、波の見えない所で加速度のみを感知し、しかも、それに意識を集中することなく対応することができるようになるには高度の訓練が必要であろう。波の見えない艦内の、しかも衝撃の大きい位置に重要な任務を持った乗員を配置しなければならないとすれば、艇の行動もある程度制限されるであろう。
半滑走状態では船体後部は衝撃が小さい。このような位置に客席を置くことができれば特定された人員を運ぶ交通航、例えば税関艇・クルーボート等は4g程度の衝撃を受けると考えて差支えないであろう。
婦人子供を含めて不特定多数の乗客が乗る場合、例えば、一般の定期航路の客船や観光船はスラミングを発生するような航行は不適当である。そのような船では1gでも衝撃が大き過ぎるということになる。異常な波高に出会う場合を考えても2gを揺れば十分であろう。
なお、波浪条件によっては微速で波に立てているだけでも6g程度の衝撃を受ける可能性があることが実際の損傷例で明らかにされているし、冬期の南方海上で操業するFRP漁船が、速力をある程度落として荒天に備えても4g程度の衝撃を受けることが実測されているので、港から遠く行動する船舶の設計に当っては特に慎重に外力を決定しなければならない。
設計衝撃加速度が決定すると、4.2船体の曲げによって設計曲げモーメントが算定される。
また、同様に4.3水圧力の大きさと分布によって船底衝撃水圧とその分布が算定される。
5.2.4 上甲板荷重
高速艇の甲板荷重として考えられるものは、甲板上に打込む波浪荷重と乗船者による集中荷重である。別に甲板補機や装備等の荷重がある。
高速艇は一般に乾舷が高く、凌波性が良好で、打込み波浪による荷重はきわめて小さい。装備機器による荷重は別として、打込海水による荷重と乗員による荷重とを分割して解析することは難しい。そこで、それらを一括して水圧式を以て示す方法が採られる。
特に軽量を要求される船の構造基準として最初に定められた水中翼船構造基準では、当時の日本海事協会鋼船規則の1/2をとり
としている。暫定基準もそれをそのまま踏襲している。
軽構造木船規則は、過去における成功した木造高速艇の実績から甲板梁の寸法を船幅に対して与えている。これから甲板を無視(縦張単板の甲板は梁の曲げに無関係)、梁のみで荷重を支えるものとして両端支持、許容応力を100kgf/cm2として甲板荷重を求めると
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